Otona no Kadaitosho

2019.10.15

なにかの部分になる

フィオナ・タンの

灰色の波を見た

港に打ち寄せるそれは

なめらかな山を描き

みぎからひだりへと

連なっていった

わたしは思う

遠い街を、その塊を。

ふくらはぎから入って

肺に満ちていく水の冷たさを。

小高い場所に 男がひとり

革靴の底で尖った石を踏む

だが、音はない。

もうここも長くはもたないと

身振り手振りで叫んでいる

冷えた血は、青い。

怖いのに

逃げないでいるのは

待っているから?

じりじりと

なにかの部分になる

母を含みながら

わたしが