
2019.08.1
大丈夫
足首にかかる
しっとりとした“大丈夫”が
いつまでも消えないで
あなたの重さが
明日も明後日も
ずっと続きますように
父は安心した顔をしていた
母はいつもよりよく喋った
窓の外で灰色の雨風が
棕櫚の大木を激しく揺らした日も
わたしは全然心細くなかった
わたしはほんとうの幸せについて考え
いつもあなたに
「大丈夫よ」と語りかける
すると“大丈夫”は
シッポを振ってそれに応える
やがて
冬よりも早く朝が来る季節になって
朝日が庭を金色に照らせば
夏に死んだカッコウも
番いになってきっと帰ってくる
飛んで描いた曲線の向こう
立ち上る街の煙は
空の境目で白線になる
世界がわたしに
「大丈夫よ」と語りかけ
わたしは思いきり
シッポを振ってそれに応える