
村上龍『五分後の世界』(トイプードル通信2016年1月号より)
今月の課題図書は、
村上龍
『五分後の世界』
今まで読んだ中で、
心が震えた小説をあげるとするならば、
これはそのうちの一冊に入るでしょう。
心が打ち震える、沁み入る・・・そんな感動ではなく、
「震撼」という言葉がふさわしい。
初めて読んだ時は衝撃でした。
今まで村上龍さんの事、ただイヤらしいおじさんだと思ってて、ごめんなさい。
オレはジョギングをしていたんだ、と小田桐は意識を失う前の事を思った。
だが今は硝煙の漂うぬかるんだ道を行進していた・・・・
主人公・小田桐が「五分後の世界」、
いわゆるパラレルワールドに迷い込むところから、物語は始まります。
その世界では、第二次世界大戦はまだ続いていて、
日本は連合国に分割統治され、日本人はゲリラ兵として連合国と戦っている。
戦闘の描写が徹底してリアルでグロテスク、壮絶で、疾走感のある作品です。
戦争の悲惨さ、日本人の誇りや人間の尊厳とは何か、
そういうものについてのメッセージが込められている作品だと思いますが、
わたしはそこに注力しようとは思わない。
小説中でしつこいほど長く描写されている、
ピアニストのワカマツの激しいピアノ演奏の音が、
爆撃音とともに最後までBGMのように聴こえて、鳴りやまない。
物語のラストは圧巻。
ただただその過剰で濃密な描写力と情熱で圧倒し、
計算されたカタルシス。
息もつかせない、わき目もふらせない、
村上龍という小説家の凄さに、
震撼したのでした。
そういえば、毎週水曜22:30~やっている、
私のツイキャス番組「サトコのほろよいキャス」のオープニング曲は、
Bud Powell「Cleopatra’s Dream(クレオパトラの夢)」というJazzの名曲なのですが。
浪花のクレオパトラって呼ばれてるから(笑)ネタでこの曲にしたんやけど、
その昔、村上龍さんが毎日放送でやっていた「Ryu‘s Bar」という番組の、
オープニングもこの曲だったらしい、と最近知りました。
ご縁がありますね。
おやすみ、
おはよう
では、また会う日まで
オトザイサトコ