Otona no Kadaitosho

2018.09.7

安部公房『砂の女』(トイプードル通信2015年11月号より)

今月の課題図書は、

安部公房

『砂の女』
 
 

安部公房

とても好きな作家のひとりです。

 

一般社会と切り離された、砂に埋もれた集落。

そこに迷い込んだ男は砂の穴の底に埋もれてゆく一軒家に閉じ込められる。

日々脱出を夢みて格闘する男と、

男を穴に引き留めようとする女。

圧倒的な描写力でしつこいほど細かに描かれた砂の描写、

読んでいる間ずっと、

払っても払っても乾燥した砂の感触が肌にまとわりついてきます。

 

 

 

しかし、あの生活や、この生活があって、向こうの方がちょっぴりましに見えたりする。

このまま暮らしていって、それでどうなるんだと思うのが、一番たまらないんだな

 

 

私は、人生は足元の砂の山を積み上げるようなものだと思うのです。

さらさらと手ごたえのない砂を、日々せっせと自分の足場に積み上げていく日々。

高く積み上げれば絶対いつか目線が上がって、

上の方にある見たことない景色を見ることができる。

それを期待しながら。

 

だけど、

「だいたいここの砂は積みにくい、あっちの砂の方が早い。」

と、新しい場所へ可能性を求めて行きがち。

 

隣の芝生ならぬ、隣の砂場は青く見えるのよ。

今までの場所に別れを告げて。

今まで積んだ足場をほったらかして。

 

それを人は「前へ進む」と表現したりします。

それはなんか私違うように思うのです。

 

どの場所でも、私たちは同じ砂をただ積んでいくだけの日々だと。

今ある足場の上にもきっと見たことない景色がある。

 

だから私は、

「前へ進む」よりも「積む」っていう表現がすき。

 
 
 
おやすみ、

おはよう

では、また会う日まで

オトザイサトコ