Otona no Kadaitosho

2018.09.7

幸田文『台所のおと』(トイプードル通信2015年10月号より)

今月の課題図書は、

幸田文

『台所のおと』

 

 

食欲の秋ですので、

食に関する本のキブン。

 

食いしん坊なので、

食に関する本は好きなんですけど、

特別好きな短編集。

なかでもやはり表題作「台所のおと」は秀逸です。

 

病の床で障子越しに

台所で妻が立てる料理支度の音にじっと耳を澄ませている元料理人の夫、佐吉。

 

 

 

やがてまた流し元へ戻ると、今度は水栓全開の流れ水にして、菜を洗いあげている。

佐吉はその水音で、それがみつばでなく京菜でなく、ほうれんそうであり、

分量は一把ではなく、二把だとはかって、

ほっとする安らぎと疲れを感じる

 

 

 

凛と張り詰めた空気の中で、

爽やかな水音が聞こえそう、、、

ほうれんそうの青までもが目に浮かぶような、

鮮やかな文章が印象的な小説です。

 

 

生活の中で立てる音ってのは、

その時のその人そのものを表すのかも。

妻のあきが立てる、台所の音は、柔らかくどこかせつない。

 

小さな音に、その人が詰まっているということ。

幸田文の小説を読むといつも、

日々を丁寧に生きる美しさを教えられる。

 

凛とした人は凛とした音を出していたかな、、、

この本を読み返していた時、

今まで私が聴いてきた台所の音を、

懐かしく思い出したりしていました。

 

 

私はといえば。

 

ピアノを弾いたり、

歌を歌ったり、

ずいぶんと派手に、、、

大きな音を出していますが、、、、

 

これも私そのもの。

 

わたしの中からにじみ出る、

生活の音のひとつ。

 

 

おやすみ、

おはよう

では、また会う日まで

オトザイサトコ