Otona no Kadaitosho

2018.10.20

森泉岳土『うとそうそう』(トイプードル通信2018年10月号より)

今月の課題図書は
森泉岳土
『うとそうそう』
 
 
先日、森泉岳土さんの新刊「セリー」が出たので早速買ってきて読んでました。
最初に森泉さんを知ったのが、「うとそうそう」で、
こんな漫画があるのか!これは漫画なのか?とすごい衝撃的な出会いだった。
 
「漫画」とうよりは、「詩にイラストがついている」と言う方が印象的にまだ近い。
でも詩ってのもなんだか違うねん~。物語なんだろう、うまく言えないのだけど。
懐かしさを覚えるイラストが、そこに書かれた言葉とあいまって、えもいわれぬ感傷的な気分を呼び起こす。
それは手に掴めないもの。
ふわっとした陽だまりのような、寂しさのような、感じたことのない温度と湿度を持った感情が溢れ出してくる。それがまったく新しい。
なんじゃこりゃあ、すごい、すごい才能や、(←誰?w)て、本当に思いました。
ただのファンです。
 
 
烏兎(うと)匆匆(そうそう)
月日の経つのが早いこと。「烏兎」は古来、太陽に烏が、太陰(月)には兎が棲むという伝説から、日月を意味する。
なお兎は「脱兎の如く」などのように素早さに喩えられる動物でもある。「怱怱」は慌しいさまを意味する。
転じて、月日があっという間に過ぎ去っていく様子を指す。光陰矢の如し。(Weblioより)
 
 
タイトル通り、登場人物が、月日が経った後、過去を思い返しているというテーマで様々なシチュエーションを切り取った短編集です。
特徴的なのは、イラストが鉛筆で描かれた線だけのもので、色もついていないんです。
しかもまるでデッサン途中の絵のように、細かな所まで描きこみが全然されてなくて、人物や背景も輪郭だけだったりすることもある。
 
幸せな過去の記憶にはきっと、ディティールがないんだと思う。
森泉さんの独特な絵の魅力が、この「うとそうそう」でより生きていて、様々な作品の中でも私は特にこの作品が好き。
 
秋の夜長に是非どうぞ。
 
 
おやすみ、
おはよう。
また会う日まで。
 
オトザイサトコ