Otona no Kadaitosho

2018.09.7

石川直樹『最後の冒険家』(トイプードル通信2018年4月号より)

今月の課題図書は

石川直樹

『最後の冒険家』

 

 

写真家の目が欲しい。

 

いつもそう思う。

写真を撮る人ってのは、

世界が違う風に見えているんじゃないかって思ってる。

全体を俯瞰で見て、構図を切り取るような、

そんな目を持ってるんじゃないかって。

私も一度でいいからそんな目で世界を見てみたい。

 

「最後の冒険家」は、

熱気球でヒマラヤ8000m越えを達成した日本人冒険家・神田道夫との出会いから、

熱気球で太平洋横断を試み、消息を絶つまでの冒険の軌跡を、

かつて一緒に熱気球で太平洋横断を試みたパートナーであった石川直樹が綴るルポルタージュ。

第6回開高健ノンフィクション賞受賞作です。

 

石川直樹は本作では自分のことを「冒険家ではない」と言っていますが、

エベレスト最年少登頂記録を更新するなど、

世界の名だたる山々の登頂記録を持つ、(一般的には)「冒険家」であり、

自ら登頂した山の景色やその土地の人々、文化を切り取った写真を撮り続ける写真家でもあります。

 

この本を読んだとき、

文章から、

「ああ、私が思い描く写真家ってこんな人」って思った。

 

神田氏と熱気球で飛んだ時の、九死に一生を得た冒険譚を語っており、

そのすさまじく緊迫した危機的状況にハラハラし、ページをめくる手が止まらないんですけど。

でも、どこか俯瞰的で、理性的で、淡々としている文章なんです。

 

噂によれば、ご本人、思考、分析、行動!って感じのお人柄だそうです。

文章って性格出るよね、、、いや~好きだなあ。

 

 

世の中の多くの人が、自分の中から湧き上がる何かを抑えて、したたかに、そして死んだように生きざるをえないなかで、冒険家は生きるべくして死ぬ道を選ぶ。

ぶれずに自分の生き方を貫くことは、傍から見たら不器用に見えるかもしれないが、神田は本当の意味で生きていたのだ。

自分の衝動にあらゆるものを賭け、全力で生き続けたのだ。

 

 

この本のタイトル、「最後の冒険家」。

石川直樹氏の、神田道夫氏への最大限の敬意が込められていると感じます。

 

 

私は、「冒険」とは自分には縁遠いものだと思っていたし、特に興味もなかったけれど、

生きることそのもの、日常における小さな挑戦も冒険であると石川直樹氏は語っています。

 

ならば、先行きの見えないこの私の音楽人生も冒険であろうよ。

そんなことを考えながら、伸ばしかけた前髪を、また切りました。

わたしの冒険、とぅーびーこんてぃにゅー。

 

おやすみ、

おはよう

では、また会う日まで。

オトザイサトコ