Otona no Kadaitosho

2019.09.13

素材の選択

原美術館で開催中の加藤泉の展示に行ってきました。
まとまったものを見たことがなかったのだけど、
今回初めてインスタレーションや絵画作品を集中的に見れて、とても良かったです。

 

美術館の様々なスペースをうまく利用して、
思いがけないところに胎児形の立体作品が置かれていて、それを見つける楽しみもありつつ。
お庭のひょっこりはんを発見した時にはなんだかじんわりテンションが上がりました。
2階のショーケースたちもとても良かった。

 

素材の選択が面白いんだなと、今回改めて思いました。
私は石を使った作品が結構好みだったんですけど、
イメージから素材を選択するのではなく、
素材からイメージが生まれているように感じさせる、
まるで作り手の肌感覚に触れているかのような作品の数々は、
そういう意味でもプリミティブと形容されるにふさわしい気がします。
有機的な素材とソフトビニールの独特な密封感(ちょっと息苦しい感じw)の組み合わせも良かったな。

 

人間は、生まれてから、名前を呼ばれてはじめて、「私」というものを発見すると言いますけど。

自己を独立した個体として認識するもっとずっと前の、動物でもない人間でもない、
生理的欲求しかない持たない純粋な生命体を形にしたら、加藤泉の人型になるように思います。
自然発生的で、多発的。
その存在意味を問いかけても、マンホールみたいに真っ暗な穴ぐらで、何も見えない。

 

そういえば原美術館は、残念ながら来年閉館だそうですね。忘れてたけど・・・
これがもしかすると最後になるのかな~と感慨深かったです。
結構何度も足を運んだ美術館のひとつ。
ちょっと長く生きてきて、
関わりのあった人がこの世を去ってしまったり、思い出の場所がなくなったり、

そういう年頃なんですね。

 

どんなさよならも悲しいけど、
当時の私が感じたあの時だけの感覚は、
建物の存在感と共に、
失われててしまう物よりもっと中に刻まれて、いつだって取り出せる。
それはかつてのもの。
だけど、現在している明るさ。