Otona no Kadaitosho

2018.09.7

カズオ・イシグロ 『わたしを離さないで』(トイプードル通信2015年7月号より)

今月の課題図書は

カズオ・イシグロ

『わたしを離さないで』
 
 
私の曲にも同タイトルの曲があります。

パクったわけじゃないですよ。

特に関係ないです。内容とか。

カワイイ歌やし。

 

でも、あの曲を作った時には、

この本はすでに読んでいました。

私の人生の中で至極の一冊に入る、素晴らしい小説です。

読むのが止まらなかった。

久々にすごい作品と出会った!と思いました。

 

オトザイサトコの「わたしを離さないで」も、

私にとっては岐路となる思い出深い曲なので、

同タイトルの曲ができたことは、なんだか嬉しかったのを覚えています。

 

人工臓器の提供の為だけに作られたクローン人間を育てる、

ヘールシャムという隔離施設でのお話。

 

そこで幼少時代を共に過ごす、

ルース、キャシー、トミーら3人の過酷な運命と、

葛藤、心の動きが淡々と綴られていきます。

 

全体に置いて、かかっている霧のような曇天が、

ずっとぬぐえないような、そんな印象の作品。

 

カズオ・イシグロという人は、静謐で抑制された、理性的な文章を書く人です。

すごく現実離れしたお話なのに、

それを感じさせないくらい淡々と引き込まれていきます。

 

仕掛けられた謎は、物語の終盤で解けていくんだけど、

そこにカタルシスはなくて、

どうしようもない叫びのような、悲しみの曇天が残る。

 

Never let me go (わたしを離さないで)

 

という叫びです。

 

臓器提供の為だけに生きるという理不尽すぎる運命を静かに受け入れて、

運命に翻弄されながら、そこに小さな幸せをみつけていくという主人公たちの姿は、

今を生きる私たちにも少し似ています。

 

どんなに必死にしがみついても、

死という運命によって別々に流されていく私たち。

その孤独な「別れ」を繋ぎとめるものは、

愛であると、いつも知るのです。

愛だけが別離を超えることができると、

いつも信じているのです。

 

とても悲しくて、美しい物語。

 

 

感情移入しすぎて、

おまけコーナーが本編より長くなりました笑

読んで頂いてありがとう。

 
 
 

おやすみ、

おはよう。

では、また会う日まで。

オトザイサトコ