Otona no Kadaitosho

2018.09.7

村上龍『五分後の世界』(トイプードル通信2016年1月号より)

今月の課題図書は、

村上龍

『五分後の世界』
 
 

今まで読んだ中で、

心が震えた小説をあげるとするならば、

これはそのうちの一冊に入るでしょう。

心が打ち震える、沁み入る・・・そんな感動ではなく、

「震撼」という言葉がふさわしい。

初めて読んだ時は衝撃でした。

今まで村上龍さんの事、ただイヤらしいおじさんだと思ってて、ごめんなさい。

 

 

 

オレはジョギングをしていたんだ、と小田桐は意識を失う前の事を思った。

だが今は硝煙の漂うぬかるんだ道を行進していた・・・・

 

 

 

主人公・小田桐が「五分後の世界」、

いわゆるパラレルワールドに迷い込むところから、物語は始まります。

その世界では、第二次世界大戦はまだ続いていて、

日本は連合国に分割統治され、日本人はゲリラ兵として連合国と戦っている。

戦闘の描写が徹底してリアルでグロテスク、壮絶で、疾走感のある作品です。

 

 

戦争の悲惨さ、日本人の誇りや人間の尊厳とは何か、

そういうものについてのメッセージが込められている作品だと思いますが、

わたしはそこに注力しようとは思わない。

 

小説中でしつこいほど長く描写されている、

ピアニストのワカマツの激しいピアノ演奏の音が、

爆撃音とともに最後までBGMのように聴こえて、鳴りやまない。

物語のラストは圧巻。

ただただその過剰で濃密な描写力と情熱で圧倒し、

計算されたカタルシス。

息もつかせない、わき目もふらせない、

村上龍という小説家の凄さに、

震撼したのでした。

 

 

そういえば、毎週水曜22:30~やっている、

私のツイキャス番組「サトコのほろよいキャス」のオープニング曲は、

Bud Powell「Cleopatra’s Dream(クレオパトラの夢)」というJazzの名曲なのですが。

浪花のクレオパトラって呼ばれてるから(笑)ネタでこの曲にしたんやけど、

その昔、村上龍さんが毎日放送でやっていた「Ryu‘s Bar」という番組の、

オープニングもこの曲だったらしい、と最近知りました。

 

ご縁がありますね。
 
 
 
おやすみ、

おはよう

では、また会う日まで

オトザイサトコ